2022/12/31 13:12


「環境保護(保全)」も「有機農業」と同じように目的と手段の逆転・混同が起きやすい活動だと思っています。

課題が地球規模なので、「人間の活動そのものが環境破壊だから、人類は滅亡した方がいい」とか、「人間も地球環境の一部だから、環境破壊もプロセスの一環でしかない」とか、極端な見方が可能です。

なので、自分たちが「何のために」、「どのように」環境保護・保全活動に取り組んでいるのか、スタンスを明確にしなければいけないと思っています。

いろいろな環境保護・保全活動があっていいと思いますが、「環境保護」のための活動は手段の目的化で、迷走してしまう気がします。

 

【黒川ミニマルズのスタンス】

そもそも農業という行為自体も環境破壊といえます。

そんな中で私たちが環境に配慮した農業をする理由は、

 

・次の世代に豊かな農地を渡すため

・私たちが美しいと思う景観を守るため

・私たちの農業で周辺の動植物への悪影響を(なるべく)与えないため

・自分たちの農業で環境汚染をしているという心理的負担をなくすため(私たちはいろいろ気にしてしまう性分なので)

 

です。

そのために、私たちは「有機農業」と「脱プラスチック」に取り組んでいます。

私たちの野菜には、その分、手間もコストもかかっています。(正直非効率かもしれませんが、私たちの農業は効率を求めていません)

 

【黒川ミニマルズの脱プラスチック】

農業では、ビニールハウス、ビニールマルチ、防草シート、ビニールネット、ビニール紐などをはじめとして、プラスチック資材が大量に使われています。当事者になってみて、その多さに心から驚きました。

そして、それを使うとどうしても圃場にプラスチックの端切れが残ってしまいます。

それが風に飛ばされ、川に流れ、海に行ってマイクロプラスチックになったり、虫や鳥、動物が食べて死んでしまったり、地中に分解されずに残ったりしているに違いない、と私たちは想像してしまいます。

また、農業のプラスチック資材は基本的に使い捨て(まだリサイクルが確立されていない)なので、資源のムダ使いに繋がります。ただ、農業の発展には、プラスチック資材は必要不可欠だったのだとは思います。ただ、農業のやり方は1つではありません。プラスチック資材を使わずにやる方法もあるはずで、私たちはその方法を模索しました。(今も模索中です)

 

私たちは、

通常ビニールハウスで栽培されるミニトマトを露地で栽培し、

ビニールマルチの代わりにグリーンマルチ(植物によるマルチ)を使い、

防草シートの代わりに緑肥(ムギ)による雑草抑制を行い、

ビニールの誘引ネットの代わりに竹炭原料のネットを使い、

ビニールテープの代わりに紙テープでミニトマトを誘引し、

など、

農業のプラスチック資材削減に取り組んでいます。

プラスチックの代わりに使った資材は全て土にもどすことができ、次の作物に活かすことができます。

 

【プラスチック被覆肥料】

私たちは昨年このことを知り、衝撃でした。

環境保護の概念が一般化し、SDGsが叫ばれる現代において、まだ一般的に使用されているとは、と。

プラスチック被覆肥料は、水田に使用されるプラスチックに覆われた3mm程度の粒状の肥料です。

肥料が少しずつ溶け、効果が長期間にわたるため、肥料をまく手間・肥料のコストを削減できるため、農家にとっては使い勝手が良く、一般的な肥料のようです。

問題は、使用後にプラスチックの殻が残り、そのまま川に排出され、海に流れてしまうことです。

1970年代から、今でも使用され続けています。

ちなみに国がプラスチック被膜肥料を問題視し、農水省が調査し始めたのは一昨年(2020年)くらいからで、関係団体に対応を依頼したのは今年(2022年)の1月でした。(どっちも遅すぎ!)

 

庄内の田園風景は非常に美しく、私たちは大好きです。

また、海もきれいで、魚も美味しいです。

 

ですが、このことを知ってしまってからは、「この美しい風景にも大量のプラスチック被膜肥料が使われ、毎年大量に海に流されているのかな」、と考えてしまいます。

(もちろん、庄内にはそのような肥料を使わない有機農業に取り組んでいる米農家さんも多いですが、それでも数%以下だと思います。)

今年、私たちの地区を管轄するJAも「流出防止のために柵を設置するなどの対策を」のようなチラシを配っていましたが、そんな柵(策?)は3mmのプラスチックがすぐ詰まってしまい、効果に疑問符が付きます。

 

この「美しい」庄内平野と、「美しい」庄内浜、「美味しい」地魚を守るために、庄内地方のJAには、「プラスチック被覆肥料」の全廃(と代替肥料の導入)を即時に実行してほしいと思ってます。

 

現在の日本の農業のやり方は、大量にプラスチック資材を使用・廃棄せざるを得ない状況にあるため、農業における脱プラスチックはアンタッチャブルな雰囲気がありますが、そういう雰囲気が稲作における海洋への大量のマイクロプラスチック排出に繋がってしまったのではないかと思っています。(現在進行形です)

 

そういう意味でも私たち黒川ミニマルズは「脱プラスチックに取り組んでいます」と、積極的にアピールしたいと思います。

SDGsに乗っかっている感が出ているのは重々承知しておりますし、ちょっと乗っかっています)

 

 

次回は、「(黒川という)中山間地で農業をすることになったワケ」について書きたいと思います。